男の子がほしい
夫はよくそう言っていた
絶家になるから
姓を継ぐ子どもがほしい
そういうことにはこだわる
男の子ができたとわかった
夫は飛び上がるほど喜んだ
私を大切にして
生まれてくるのを楽しみにしてくれていたんだろうとは思う
出産の時
陣痛と思って病室で痛みを耐えていた
病院に来たばかりなのに
間隔をあけてやってくる陣痛とは違っていた
継続的になんだか痛みがある
看護士さんが診察してくれるが
「まだですね。」
「様子みましょう。」と
いやそれにしてもずっと痛い
先生が来て診察してくだかった
「すぐ帝王切開だ!」
「急がないと危ない!」
「助けるからな!」
驚きと恐怖の中
「頼れる先生だ、お願いします。」
心から思ったのを覚えている
その後は覚えていない
無事元気な男の子が生まれた
よかった
原因は早期胎盤剥離だった
お腹の中の赤ちゃんに酸素が送られなくなる上に
母体も危険という症状だ
落ち着いてから、先生が
「赤ちゃんもお母さんも助けられたよ。」
「あと数分遅かったら、ダメだったと思う。」
「気づいてよかった。」
と教えてくださった
本当にありがとうございました
ありがとうございました
繰り返し言った
よかった
ただ自分がこのような経験をしたことが
私にとっては
あまりにも大きな精神的ショックだった
今まで骨折や手術など大きいけがや病気をしたことはない
心配性で、失敗やけがのないよう慎重に行動する性格だ
何事もないように安全に暮らしてきた
些細だが帝王切開でできた傷もショックだった
病院では先生や看護師さんに親切にしていただいて
心穏やかに順調に回復していった
さあ退院
家に帰ると
赤ちゃんの世話、2人の上の子どもたちの世話、家事
家の中で続けてきた仕事も少しあった。
待望の男の子の誕生で
夫も理解して手伝ってくれるだろう
3人の子育ては大変だということは当然わかるだろう
協力してくれるだろう
夫に話もした
「そうだな、うん、うん。」
と夫は言った



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